常滑には「味覚の道」という知多広域農道がある。南は小鈴谷(こすがや)のあたりから北は矢田というところまで、とにかく常滑を走っている間はずっと「味覚の道」だ。一本西側で海沿いの国道155号線に比べると、車も信号も少なくて走りやすいうえに景色も良く、田舎感はぐっと増していて、バイクや自転車のツーリングのひとたちにとっては人気の道となっている。以前、初めて知多半島を訪れた私の父は、南北の道が英国のようだとも表現していた。かなりの縮小版にはなるけれど、あながち大外れではない。

そんな知多半島。さすが丘陵地なだけあって、途中途中で過酷な上り坂・下り坂も出現する。そのため、自転車ツーリングのひとたちにとっては、かなりキツそうだ。しかも、この道、自転車やバイクだけじゃなくて、大型トラックや乗用車も通るので、交通量はそこそこあり、車を運転している私ですらひやっとする瞬間もあるくらいだ(平日朝と夕方の通勤時間は特に要注意)。真夏にはじりじり太陽が照り付け、炎天下フラフラになりながら自転車を走らせるひとたちを見かけると、「どうぞご無事でー!」と祈りながら念を送らざるを得ない。

そんな急こう配の坂を擁する「味覚の道」の中で、もっともおすすめしたいのが、島池東の交差点から少し北へ上った辺り、本宮山の案内が出て割とすぐの左手に見える景色・・・。これが、まぁ、なんとも息をのむ美しさなのだ(もちろんお天気による)。中部国際空港(セントレア)越しには伊勢湾の眺望が広がり、地球の雄大さえ感じられる、なんとも贅沢でとっておきの景色である。
雲ひとつない澄み渡る青空や、夕暮れどきに太陽が沈むさま、そして夜空にきらめく景色を目の当たりにすると、思わず心から感嘆の声が漏れるほどだ。いろんな時間にそのときどきの大地と空と海の美しさを体感できる、ほんとはあまり教えたくない絶景スポットである。
(太陽にほえろばりの巨大な太陽に出合えることも)

ここでひとつとても大切なことをお知らせしておきたい。
あたりまえだけど、ドライバーは景色を堪能してはいけない。楽しむのはかならず同乗者だけにしよう。片道一車線であるうえに、道路幅もさほど広いとも言えない。アップダウンもあり、時々ノリノリにスピードをあげて走る車もいるので(制限は時速50㎞/h)、景色を見ながら走るのは危険だ。ただ、景色を見ていなくても、なんとなく視界に入る絶景は、きっと脳裏の片隅に焼きつくだろう。
どうしてもどうしてもその景色が見たいひとに、 “ある場所”をこっそりおしえちゃいます。島池東の交差点から北上して進むと、一旦山を登りきるところがある。そこを過ぎてゆるやかに下っていくと、割とすぐに左手にちょっと車を停められるかもしれないスペースを発見するだろう。ちょうど「樽水本宮山」の看板の手前だ。そこは「Tarumi(樽水) road」という道に合流する場所で、合流部分は割と道幅があるので、ほんとに少しの時間なら停められそう。そこから存分に景色を堪能してもらいたい。もし先約がいたらいさぎよくあきらめて次回のお楽しみに(何台も停めていると危ないです)。

このTarumi road、南から行くとちょうど「樽水本宮山」の看板が出るので分かりやすい。ただ、夜になると街灯も無かったはずなので、じゅうぶんに気を付けたい。あともうひとつ気を付けたいのが、運転しながらなんとか景色を見ようと超スロースピードで走る車。これがほんとにこわい。アップダウンがある道なので、まぁまぁなスピードで上り坂をのぼった先に、亀さんみたいな車がいることも考えられるので、やっぱりドライバーはしっかり前を見て運転しよう。
ちなみに「味覚の道」とは、知多市と南知多町を結ぶ全長41kmの知多広域農道の一部の愛称で、市町ごとに呼び名が違っている。知多エリアでは「知多満作道」、常滑エリアでは「味覚の道」、美浜エリアでは「ふるさとロード」、南知多エリアでは「すいせんロード」と呼ばれているらしい。今回注目している「味覚の道」のほか、なかなか気になるネーミングの数々だが、どうやら市民から募集して選ばれた名前らしい。実におもしろい。
おまけ:セントレアの管制塔と伊勢湾

バイカーのブログなんかを見ていると、「知多満作道」→「味覚の道」→「ふるさとロード」→「すいせんロード」を乗り継いだ先にたどり着く南知多のオーシャンビューは、最高の景色だそうだ。いつか行ってみたい(もちろん車で)。
