日本三大運河のひとつ
半田運河は北海道小樽市・小樽運河、宮崎県日南市・堀川運河に並ぶ日本三大運河のひとつに数えられています。
半田運河が開かれたのはおよそ330年前の江戸中期。
半田では江戸初期から酒造家が増えはじめ、江戸中期には江戸と上方との中間地にあることから「中国酒」と親しまれ、江戸の3割を担うほど人気を集めたそうです。
1800年代には今も蔵が建ち並ぶミツカングループ(中埜酢店)、『國盛』で知られる中埜酒造も創業。半田運河沿いは醸造蔵と江戸や関西へ向かう船の行き交う賑やかな港となっていきました。
半田生まれの粕酢は江戸前ずし誕生に一役
半田運河界隈の新進気鋭の醸造家と言えば、ミツカン創業者初代中埜又左衛門が筆頭に挙げられます。又左衛門は江戸で流行り始めた“早ずし”に目を付け、高価な米酢の代わりに地元にある酒の搾りかすを原料とした酢造りを思い立ち、試行錯誤の末製法を確立しました。江戸で握りずしのブームの中、粕酢は旨味と価格で瞬く間に評判となり、全国へ広まっていきました。又左衛門の考案の粕酢は日本のすし文化を支え、地元には他にない特産品を生み出しました。
江戸と明治の面影溢れるまちを歩く
半田運河周辺はふらりと歩くのにちょうどいい場所です。
まずは、ミツカンの歴史が丸ごと詰まった「ミツカンミユージアム(MIM)」へ。運河沿いに北へ歩いていくと海運業や醸造業で栄えた中埜半六家の旧邸宅が見えてきます。明治22年築とされ、現在フレンチレストラン「HANROCK」「バウムクーヘン研究所」が営業中です。隣接の「國盛酒の文化館」は築200年とも伝わる酒蔵を利用した酒造りの資料館です。直売所も併設しています。Uターンして有形登録文化財 小栗家住宅へ。醸造業など半田の豪商 小栗家の店舗兼住宅です。庭園には毎年4月にハート形の幹をした白モッコウバラを見学できますのでお見逃しなく。源平橋を渡って半田運河の向こう岸へ渡ります。キッコウトミの醸造蔵があります。明治25年創業、酒造、味噌醸造を経て愛知県で最初に醤油醸造を始めたと言われています。
また最寄り駅のJR武豊線半田駅は愛知県下でもっとも早く鉄道が敷かれた路線です。鉄道資料館でSLの見学、今後は日本最古の木造跨線橋(現在移築保存ため解体中)も展示予定ですのでお楽しみに。
半田運河は今も昔も絵になる風景
ミツカン工場前で、黒澤明初監督作品「姿三四郎」で主人公が相手を川に投げ込むシーンが撮影されました。1943年頃はまだ堤防もなく、現役の醸造蔵が並び、半田らしい黒塀の味わい深い風景が見られます。MIMの前の案内板と見比べてみると半田運河もずいぶん垢抜けました。
数年前からこの運河に新しい夏の風物詩が誕生しました。水辺に光の玉がゆらゆらと揺らめいて幻想的な風景を醸し出します。3世紀にわたり受け継がれる地酒と旬の食材でもてなされるひとときは格別なものです。みなさんもぜひ。
蔵のまちエリア(半田市)