抹茶の新茶は11月初旬とされ、春に摘み取った新茶が熟成し、最もおいしい季節を迎えます。
今年の抹茶を初めて味わう行事は「口切の茶事」と呼ばれ、大切な節目とされています。
深まる秋に茶の湯に触れてみませんか?
大野城のある青海山で「尾州久田流」を指導する竹島先生を訪ね、流れるように滑らかで美しいお点前を拝見。「茶の湯は心を無にし、忙しい日常をリセットする時間です。高校でも指導していますが、古い道具を大切に受け継いでいく姿勢が自然に身につき、しぐさも美しくなります」と竹島先生。「最初はおいしい和菓子が楽しみというだけでいいんです。茶道の礼儀作法は稽古を続けるうちに体が覚えるものです」。
客人をもてなすために、床の間に飾る掛物を考え、庭で育てた花を飾り、抹茶に添える和菓子を選ぶ—。日本人らしい「もてなしの心」を感じながら、心穏やかな時間を過ごすことができました。
久田流の歴史は、千利休の妹・宗円を母とする久田宗栄を初めとします。「尾州」の名を冠する「尾州久田流」は、名古屋市緑区大高を拠点とする茶道の流派であり、明治維新前後、大名の茶から庶民の茶への転換期に、知多・三河・美濃に茶を広めたとされています。
「点前は威厳をもって、さらさら流れるごとく」と評され、おんな点前を得意としています。
●茶道問合せ 尾州久田流家元
https://www.bisyuhisada.com/
竹島 晃玉 さん
常滑市生まれ。15歳から茶道を学ぶ。
尾州久田流家元に入門し稽古に邁進。2011年より常滑市青海山で茶華道教室を主催。
抹茶の茶碗は、冬には保温のため厚めの筒型の器を選んだり、夏には浅い器で清涼感のある器を選んだり、季節ごとに使い分けることも大切。とはいえ、茶の湯には「見立て(みたて)」という言葉があり、伝統的な茶碗に限らず、片口や振出、小鉢や向付など自分のセンスで選んだ普段使いの器を茶道具として使うのも風流とされています。
「器は育てるもの。使うほどに味わいが深まります。心静かに茶の湯を楽しむ時間で自分をもてなしてみては?」と常滑焼の陶芸家である谷川氏。道具1つ、所作1つ、その意味を知るほど茶の湯の世界は広がります。お気に入りの器や道具、季節の和菓子を吟味して、もっと気軽に秋の茶の湯を楽しんでみませんか?
海草の甘藻(あまも)を使って焼成した「金糸」と呼ばれる繊細な線が絡む独特な模様が特徴
めずらしい「振り出し」。金平糖など小さなお菓子入れ
谷川 仁 さん
常滑市生まれ。常滑高等学校窯業科卒。水野静仙氏に師事。
数多くの陶芸・美術展で入賞し、国内外の博物館に作品が所蔵される。常滑焼の伝統技法である藻掛けの代表的作者。
尾張一の湊町として栄えた常滑市大野。海運により繁栄した歴史もあり、茶の湯を嗜む風流人が多いからか、自宅に招かれると抹茶と和菓子のもてなしに出会います。
大野の常滑街道沿いにある、木綿などの繊維を扱う商家「大黒屋」として江戸時代から続く杉山家には、往時に多くの客人をもてなした茶室「小槌庵(こづちあん)」が現存※。知多に縁のある「久田流」の流れを汲む茶室とされ、「設計図」や「濡額(ぬれがく)」など貴重な資料も残されています。
茶会の日に客人を迎えるため茶室の入口に掛けられた濡額