【知多半島情報誌「Step」特集】地元で味わうお米のチカラ vol.1


地元のお米とおにぎり屋さんを巡ろう

毎日のごはんがもっと好きになる、そんな“お米のまち”を巡ってみませんか?
半田市と阿久比町には、昔ながらの田んぼが今も息づき、おいしいお米が大切に育てられています。その一粒一粒には、生産者の想いや工夫、そして地域の歴史がぎゅっと詰まっています。そんな地元のお米やこだわりのお米の達人が厳選したお米を気軽に味わえるのが、おにぎり屋さん。地元の素材を活かし、ひとつひとつ手でにぎられたおにぎりには、まちの魅力とぬくもりがつまっています。
今回は、お米のふるさとを訪ねながら、人気のおにぎり屋さんも一緒に巡る、小さな“おいしい旅”仕立てでご紹介します。心もおなかもほっと満たされる時間、きっと見つかるはずです。

参考資料:あぐいのあゆみ(阿久比町町誌編さん委員会)、郷土読本はんだ(半田市教育委員会)、絵図と古文書にみる半田のむかし(一般財団法人招鶴亭文庫)


半田と阿久比の田んぼから、いただきます!

半田市と阿久比町に広がる田んぼでは、昔ながらの知恵と手間をかけて、おいしいお米が育てられています。地元の農家が語る“ごはんの物語”、ちょっとのぞいてみませんか?

阿久比米

 


 

さわだ農園 澤田崇史さん。管理する田んぼは約20ヘクタール。ナゴヤドーム約4個分に相当する広さで、阿久比の豊かな自然のもと、米作りが丁寧に行われています

 
1300年の歴史を誇る阿久比の米作り

水が少なく平地も限られている知多半島。その中で「米といえば阿久比米」と言われるほど、阿久比町のお米は高い評価を受けてきました。その背景には、知多半島最大の阿久比川があります。この川に沿って広がる水田では、昔から人々が川の恵みを活かして米作りを続けてきました。
川の両岸や支流には「英比谷16カ村」と呼ばれる16の村が広がっており、自然とともに暮らす文化が根づいていました。また、近くに醸造の町・半田があったことも、阿久比米が重宝された理由のひとつです。
低地にあるため水害にも悩まされましたが、地域の人々は治水技術を磨き、農業を支えました。農閑期には、その技術を活かして出稼ぎに出る人も多かったそうです。

江戸時代の頃の英比谷16カ村。阿久比川の支流に沿ってまちが広がっています※英比は阿久比の旧字

 

阿久比川は知多半島で最も長い川。両岸には水田が広がり、ホタルも舞う、豊かな自然に包まれた場所です

 
“育てて、届ける”に込めた想い 阿久比米を未来へつなぐ

その阿久比で、江戸時代から続く米農家「さわだ農園」の7代目・澤田崇史さんは、「自分たちで作った米を、自分たちで届けたい」という強い思いから、直販による米作りに取り組んでいます。6代目が地元の仲間と始めた『おにぎり茶屋ほたる』では、阿久比米の美味しさをおにぎりで伝えながら、直売も行っています。澤田さんは、「応援してもらえる農業にしたいですね。生産者と消費者が心を通わせて仲間になれたら、地域の田んぼも一緒に守っていけるはず」。元農業高校教員としての経験を生かし、子どもたちへの農業体験を通じて、次の世代に農業の魅力も伝えています。1300年の歴史を紡いできた阿久比の米作りには、先人の知恵と努力、そして今を生きる農家の情熱が込められています。

 

今年10年目を迎えるおにぎり茶屋のメニュー。人気はふっくら大きなおにぎりと豚汁

 

さわだ農園
阿久比町板山川向110-4 ☎︎0569-48-2033

 

半田米

 

左から栽培を担当する三男青木優幸さん、おいしい村村長末松園子さん、データを活用した栽培管理を行う次男青木良太さん。おいしい村ブランド米「稲穂のしずく」は店頭もしくはHPから購入可能です(売り切れの場合もあります)


実は米どころ、半田

私たちの身近なまち、半田。実は昔から米作りが盛んな“米どころ”でもあるのをご存じですか?江戸時代の半田のまちは亀崎・有脇・乙川・岩滑・半田・成岩の6つの村があり、いずれの村も比較的規模が大きく、農業生産高(村高)が高い村でした。1700年ごろ、今の半田市役所あたりに「山方新田」という新たな農地が開発されました。その広さはなんと約35ヘクタール。遠浅の海が広がっていたこの地域では水の確保が難しく、そこで「半田池」がつくられ、矢勝川を通して水が引かれるようになりました。この新田開発がきっかけとなってさらに米作りが盛んになり、米を原料とする日本酒や酢の醸造業が江戸向けに発展。やがて半田は〝醸造の町〟へと知られるようになっていったのです。

江戸時代の半田は6つの村に分かれていました

 

8月下旬に収穫を迎える「コシヒカリ」。すべてのお米は収穫してすぐ乾燥して、最適な15℃で玄米のまま専用冷蔵庫で保管されるそう。年中新米のような美味しさが味わえると言います。


岩滑の田んぼに根づく、8代目の想い

江戸時代から農業を続けてきた半田市の「おいしい村」末松園子さんは、現在8代目として家族とともに約13ヘクタールの田んぼを耕しています。矢勝川周辺の粘土質な土壌は保湿性に優れ、旨みのあるお米を育てるのに適しているといいます。幼い頃から親しんだ田園風景と、岩滑のお米の美味しさを多くの人に知ってもらいたい…そんな思いから、農業体験や商品開発にも積極的に取り組んでいます。田んぼの管理や製品づくりは、きょうだい3人が力を合わせて担っています。「私たちのお米を弁当やランチで味わってもらい、生産から管理まで農家が関わっていることを知ってもらえたら嬉しいです」と末松さん。その田んぼには、地域に受け継がれてきた歴史と、未来へつなぐ家族の想いが息づいています。
 

恒例の田んぼアート。「田んぼアート米」として食べられます

 

発酵薬膳ごはん「GONランチ」は半田市内の農家の野菜も合わせたこだわりメニュー(おいしい村ごんの足跡店GONにて提供)

 

おいしい村
本店:半田市平井町6-33 ☎︎080-2636-9233
ごんの足跡店GON:半田市岩滑高山町6-20-6 ☎︎070-3076-0270
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半田米をいただける半田赤レンガ建物内のカフェの「豚のカブトビール煮ランチセット」。カブトビールでじっくり火を通した濃くある味わい。ご飯に良く合います

 

半田赤レンガ建物 cafe
半田市榎下町8 ☎︎0569-24-7031
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