盛大に行われた新美南吉生誕100年から早10年。110年って、ちょっと中途半端じゃない?いえいえ、生誕110年の今年は、南吉を身近に感じられるイベントをたくさん予定しているのだ。1月にリニューアルした記念館は、解説を読むだけでなく、物語を体感できる空間にアップデート。南吉は多くの作品で地元を舞台にしていて、周辺には童話に登場するスポットが残っていたりする。豊かで美しい童話の世界に触れる、南吉のふるさと散策に出かけてみない?
南吉が描いたふるさとの風景、
物語の世界をお散歩してみる。
半田市で生まれた児童文学作家・詩人の新美南吉。
彼の作品と魅力を紹介する「新美南吉記念館」の展示が平成6年の開館以降初の大幅リニューアル!
たくさんの物語が散りばめられた館内と併せて作中に登場する植物や、昔ながらの景色を見つけてみて。童話の世界に入ったみたいなお散歩に、わくわく。
作品をより分かりやすく!!
1月にお披露目された展示室の目玉は、新設の「ごんぎつねコーナー」。「ごんぎつね」を読んだとき、当時使われていた道具の名前なんかが出てきて、コレなんだろ?って思ったこと、なかった?なんとなく理解はしているけど、実物を見る機会って今じゃなかなか無いもの。ここではそんな作中に登場するモノたちを、解説付きで展示している。頭の上にも展示があるから、ぜひ見上げてみて。
童話の里めぐり
南吉は作品の多くで、地元を舞台にしている。地元の人じゃないと読むのは難しい「岩滑」なんて超ローカルな地名が出てきたり。そして作品で登場した景色が、今も残っていることがある。例えば童話集「牛をつないだ椿の木」に登場する「しんたのむね」は、記念館の北東すぐで観られるほか、近くの牛舎には牛もいる。ここには「ごんぎつね」で描かれていた、彼岸花が咲くことも有名。そんな昔ながらの風景を、南吉の物語に思いを馳せながら歩いてみては?
優しい童話から、ドキッとする話まで、
南吉作品を読む、聞く、知る。
記念館には展示室だけじゃなくって、無料で利用できる図書室があるって知ってた?
新美南吉の代表作品はもちろん、ちょっと意外な展開の話や、クスっとする物語などほぼ全ての作品がずらずらり。気軽に参加できる朗読イベントも楽しそう。
展示室へ向かう途中にある「図書閲覧室」。隣にある「手ぶくろを買いに」のワンシーンを再現した帽子屋が目印だ。中に入るとまず目に飛び込んでくるのが、本棚に並んだ絵本の数々。お馴染みの物語から、ちょっと不思議なお話までズラ~リ。手に取った「ごんぎつね」の表紙、こんな絵だったっけ?と思ったら、対象年齢や出版社ごとに、イラスト違いの本がたくさん。教科書で見たごん、ユーモラスなごん、渋めなごん…全部かわいい。南吉作品の一部は外国でも出版されていて、英語・フランス語・ドイツ語・中国語などの絵本もラインナップ。他にもキツネが登場する絵本など、南吉作品以外も揃えている。また南吉全集や日本の児童文学に関する文献、郷土資料などもあり、南吉文学を知る手がかりがギュッと詰まった空間となっている。
この図書室では定期的に朗読イベントも開催。毎月第2日曜の午前には「”でんでんむし“おはなし会」と題し、4、5編の南吉童話を朗読や紙芝居で紹介。毎月第4日曜の午後には「歌とお話の会」として、南吉オリジナルソングの弾き語りや、ストーリーテリングをしている。子供はもちろん、大人も一緒になって南吉文学の世界を楽しめる内容だ。
新美南吉記念館
半田市岩滑西町1-10-1 電話:0569-26-4888 開館時間:9:30~17:30
休館日:月曜日、毎月第2火曜日(祝日または振替休日の場合、翌平日休)、年末年始
入館料:220円(中学生以下無料)
【企画展】ぼくは井戸である
~「牛をつないだ椿の木」考~
開催期間:2023年4月15日~7月2日
南吉の作品には牛がよく登場する。今も酪農が盛んな半田市だが、昔は仕事のパートナーとして牛がよく飼われていたそう。そんな牛が登場する南吉晩年の代表作「牛をつないだ椿の木」を通して、南吉が私たちに伝えたかったメッセージについて考える。