布のまちでワクワク体験♪
知多半島には、江戸時代から続く「織りの文化」があります。
その代表が「知多木綿」。なかでも「晒木綿」は、綿から糸をつむぎ、布を織り、それを真っ白に仕上げることで生まれました。
「和晒」と呼ばれる伝統的な晒は、布を釜に入れて数日かけてじっくり炊き上げる昔ながらの方法。不純物を丁寧に取り除くことで、やわらかくて、さらっとした肌ざわりが生まれます。赤ちゃんの肌着や浴衣、手ぬぐい、シーツ、ガーゼなど、暮らしのいろんな場面で使われてきました。
知多の木綿は、日本一と呼ばれるほどの栄光を手にし、今では料理人の道具から世界へ広がる織物まで、その技術が受け継がれています。
「真っ白な布」は、色や形を変えながら、わたしたちのすぐそばで暮らしを支えてくれています。
「魅力ある街 岡田ー歴史をつむぎ 未来へー」 岡田街並保存会
「阿久比の概観」 阿久比町
「知多織物100年の歴史」 半田知多織物工業組合他
めぐる 知多木綿
江戸から現代まで続く「知多木綿」のゆかりの地めぐり。
歴史を感じる街並みや、発明の舞台、今も動く織機、伝統の染めの技まで。
知多半島から名古屋・有松へ、木綿とともに歩んできた文化を訪ねてみませんか。
レトロかわいい
知多木綿発祥の地
江戸時代から知多木綿の生産と集積地として栄えた岡田。土蔵や黒板塀の残る街並みは、歩くだけで絵になる風景に出会えます。手織り体験や雑貨ショップ、古民家カフェめぐりも楽しみのひとつです。
豊田佐吉ゆかりの発明の地
半田市乙川には、豊田佐吉が動力織機を発明した地を示す記念碑があります。乙川の庄屋 石川藤八とともに設立した乙川綿布では、豊田式汽力織機で高品質な木綿布が織られ、その名が広がりました。
昭和30年代の繊維ワールド、
生路に残る
昭和30年（1955）頃、知多地方の繊維工場は半田・阿久比・東浦に多く集まり、とくに東浦町の生路地区は規模・設備ともに突出していました。こちらの大生紡績は大正8年（1919）に創業し、平成4年（1992）に閉鎖しましたが、今も事務所や工場、寮がほぼ原形で残され、往時の姿が偲ばれます。
※大生紡績工場跡への立ち入りはできません
稀少な小幅シャトル織機が
現役で活躍
阿久比町内の工場では200台以上のシャトル織機が現役で稼働中。和装の反物幅に由来する幅35～40cmほどの小幅生地を織ります。ゆったりと糸を織り上げるため、軽くやわらかな風合いを生み出しています。
生地は知多木綿アンテナショップ478などで購入出来ます
有松鳴海絞りと知多木綿
江戸時代、阿久比から移住した人たちによって、「有松・鳴海絞り」が生まれました。その素材には地元の知多木綿などが使われ、手ぬぐいや浴衣となって旅人に人気のお土産に。今も「有松・鳴海絞会館」では、当時の歴史や受け継がれる技を見て、体験することができます。
知多木綿ヒストリー history
白さと風合いが光る「知多晒」
江戸時代、大野（現・常滑市）で綿の栽培が始まり、農家の副業として木綿づくりが広がりました。
大野の浜島伝右衛門や岡田（現・知多市）の中島七右衛門らが江戸へ販路を広げ、天明年間（1781～1789）、中島七右衛門が伊勢から晒（さらし）の技術を持ち帰り、その白さと風合いの良さによって「知多晒」は江戸で一番と謳われ、知多木綿の評価を大きく高めました。
また、有松（現・名古屋市）では阿久比から移住した人々が知多木綿を素材に絞り染め（有松・鳴海絞り）を始め、東海道を行き交う旅人のお土産として大人気となりました。
発明とともに飛躍！
明治に入ると、水車を利用した紡績や機械化が進みました。
明治29年（1896）には、半田に知多紡績（のちの東洋紡績）が設立されます。同年、豊田佐吉が日本初の動力織機を完成させ、乙川（現・半田市）に設立された乙川綿布で高品質な木綿布が織られるようになりました。さらに竹内虎王が竹内式力織機を発明し、当時の岡田には最大31もの工場が立ち並ぶほどの活況を呈しました。
大正13年（1924）には、豊田佐吉が開発した「G型自動織機」が世界一と称され、日本の繊維技術の高さを広く示しました。
変わる姿、残るぬくもり
昭和の時代、工場はさらに規模を拡大し、とくに岡田は全国有数の産地として栄えました。
戦前・戦後の東浦町にも紡績や織布の工場が立ち並び、最盛期の昭和40年代には知多半島で約700件が稼働。日本屈指の木綿産地となりました。
やがて、時代の変化とともに生産量は減少し、令和7年（2025）には工場は10数軒にまで減っています。それでも現場には、昔も今も変わらずに響くシャトル織機の音と、24時間稼働する最新織機の力強さがあります。
受け継がれた技術と新しい工夫が重なり合い、未来へとつながる生地づくりは今も続いています。
知多木綿の今
昔ながらの手ぬぐいだけでなく、工場から直接仕入れた生地で作るパンツやシャツ、雑貨など、日々を彩るアイテムが次々と生まれています。
知多市歴史民俗博物館では織りの技術を学ぶ講座が開かれ、木綿蔵・ちたや機織工房つものきでは織りの体験も。まち歩きを楽しみながら、自分の手や目で「知多木綿の物語」にふれてみませんか。
用語
●紡績（ぼうせき）…綿花や羊毛などの繊維をより合わせて、糸を作る工程
●織布（しょくふ）…できあがった糸を縦糸と横糸に組み合わせて布にする工程
●シャトル織機…横糸を入れるためのシャトル（舟形の部品）を、縦糸の間に左右に往復させて布を織る織機
